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Hiroshi Sakurai / 櫻井拓 – 結合が産む絵画

結合が産む絵画
櫻井伸也展 My Favorite Colors
2013年9月21日(土)~10月15日(火)
ギャラリーサンセリテ(愛知県豊橋市)

櫻井 拓・編集者

ギャラリーサンセリテでの櫻井伸也の個展「My Favorite Colors」では、「Love Pool」など櫻井がこれまでに発表してきた作品シリーズに加え、「United Colors」という2013年の新作が展示されていた。
以前のシリーズにおいて櫻井は、自身の出身地である広島と関連した、ハートやスマイルマーク、キノコ(雲)などの強い意味性を伴なうモチーフを用いている。彼はキャンバスに染色された布を張った上にポップなアイコンや鮮やかで抽象的な色彩を施し、世界の中で固有の意味を持つ「Hiroshima」と、彼が実際に育ち見知った「広島」とのズレを、重層性のある空間として表現していた。
その櫻井が、これまでのモチーフを離れ画面上で強い色彩を結合して見せたのが、「United Colors」である。特にギャラリー右奥の2枚の大作[うち1点が下図]は、いわば「完成された」強度を持っていた。
「United Colors」は、昨年の春に東京・茅場町のベイスギャラリーで初めて発表された。染色された布の上に描くという方法を採りつつも、下層の布がほとんど見えないぐらいに敷き詰められた強い色彩が、画面全体を覆う。その表面に、キリスト教のモチーフである十字架や、ファッションにおけるイタリアン・モードの記号である「ボタン」を規則的に押し付け、跡をつける。ベイスギャラリーの展示にも大型の作品はあったが、そこでは色彩は画面全体を覆う記号性によって抑制されながらも、時に錯雑として、その場所にあることに迷いもするように見えた。
だが今回のサンセリテの大作に、そのような「破綻」は感じられない。色彩は方法と一体になり、それこそが画面全体の圧(必然性)を形成する。色彩同士が水平的に結合するだけではなく、方法が徹底することで、色彩の全体が制作の方法それ自体といわば垂直的に結合し、平面が存在を持つのである。櫻井はそのようにして絵画を「産む」が、それは絵画がどこにも行けない中庸にとどまることに対する、静かだが強い意志の通ったアンチテーゼでもある。

初出:芸術批評誌『REAR』31号(特集:「震災とミュージアム」)、2014年2月発行